『プレフォール』

この時期のファッション市場は難しい。涼しくなるのが早いか遅いか、その如何で洋服の売れ行きが左右されるのは毎年のことだが、今年の夏は、なんともおかしな天候だったからなおさらのことではないだろうか。

秋冬よりちょっと前めの晩夏〜初秋のシーズンは「プレフォール」と言うが、消費者たちにもこの概念が随分と浸透してきた。秋物を着たい気持ちはあってもやっぱり暑い…という昨今の日本の気候事情から、買う側である女性たちにとってもこの時期のファッションは悩みの元。だから、７月末〜８月初旬の女性誌でも、「秋のトレンドを予習して」「的確なものを買って」「今から秋まで着回して」というプレフォール特集が盛んだった。しかし店頭では、秋物新作よりも目立つところで、まだ夏物最終セールをしていたりする。女性たちにとってはそんな中で買い物の決断するのは非常に困難。だからそういう特集は便利でありがたい存在だ。

こういう時期の女心をくすぐるための殺し文句にはふたつの方法がある。ひとつは、「夏⇒秋スライド」「今日買って秋まで」という『長く着られるからモトを取れる』という気分を刺激すること。ふたつめは、「３つ買えば劇的おしゃれ」「押さえるべき６大トレンド」「１着買えば着回し∞（無限大）」といった、『鉄板アイテムだけに絞れば大丈夫』という気分を刺激すること。どちらも経済的で賢い買い方を指南していることに変わりはない。

景気も悪いので無茶な買い物はできないし、冬シーズンまで着られるものを買うならば、多少高くても元をとりやすいというのは、「節約気分」にもなれる。プレフォールという難しいシーズンを勝ち抜くためには、「賢いお買い物」気分を上手に刺激することが肝心なのだ。