『可愛い復活、でも激変』

本格的な秋を迎え、今年っぽい新鮮なキーワードを探すも、「可愛い」ばかりが見つかる今月の女性誌。メディア側は、可愛いの次なるものを提案するモードではなくなってしまったのだろうか？

「可愛い」は、どんなイメージと合わせてもイケる汎用性の高さが、送り手にとっても受け手にとっても人気であるポイント。今までは「大人」とか「カッコ（イイ）」とかと掛け合わせることで、おしゃれワードっぽく逃げていた。でも今年は、どっぷり本気の「可愛い」宣言が見られる。もはや、「ＫＡＷＡＩＩ ＯＲ ＤＩＥ（可愛くあるべきか死ぬべきかそれが問題だ）」。その頑固一徹さは、先月の「私たち〜ですが何か？」と同じ流れ。

ファッションでもビューティの分野でも、妙に大人っぽくしてみたり、モードにしてみたり、新たな価値観をプラスするもののなんだかパッとせず、結局「可愛い」に落ち着いてしまうのだ。もう、「可愛い」という単語が、good or badというより、kawaii or badくらいの、大雑把な意味の言葉になってしまっている。

今までは、「みんな結局可愛いが好き」という制限があるからこそ、古くはエロができてみたり、去年は「品格」と言えてみたり…ということが追求できていたのではないだろうか。しかし、今年はちょっと違う。「可愛い」と「私」との勝負というか、可愛いを制することができなくては！と、なんとも男らしく可愛いを追求しているような印象。「可愛いと年齢の戦い」「可愛いとキャリアの戦い」「可愛いと黒の戦い」などなど…。

その保守的な「可愛い」志向は、ターゲット年齢を問わない。例えば今秋流行りのムートンブーツは、中学生やママさんまで含めた幅広い層に人気。価格も手頃だし、暖かくてラクチンというメリットが十分。そして何よりも、ぬいぐるみみたいなインパクトのある可愛さが好まれている。美脚ブーツで少しでも脚を細く見せようという「戦略」に、「可愛い」が勝った一例と言えるだろう。そしてこれは、メーカーやメディアがひねり出したブームではないのである。