不景気で、とりあえずご利益がありそうなものにすがりたい気分もあり、最近は「開運」という言葉を年がら年中見聞きするようになった。
これにかこつけた消費の増加でも期待したいところだが、突き詰めると霊感商法とも取られかねないので、メーカー等がビジネスに安易に結び付けるわけにはいかないかもしれない。しかし、送り手側として意識のズレが起きないように、2つの点は十分知っておくべきことだ。
ひとつめは、「開運」というの意味の変化、ふたつめは「スピリチュアル」の中身の変化だ。
まずは、言葉について。「開運」というのは、もはや女性たちにとっては神がかった特別な言葉ではなく、使い回しが利く便利なキーワードのひとつに過ぎず、「可愛い」という言葉や、かつての「セレブ」「カリスマ」という言葉と同様の軽い言葉に変化した。「可愛い」と同じように、「開運」して困ることはないし、お得感さえある。
第二に、内容面の変化。占いやパワーストーンにとどまらず、ジャンルも幅広くなっており、最も象徴的なのは、やはり「パワースポット詣で」だろう。女性誌の旅ネタといえば、パリやミラノやハワイで「日本未発売品のお買いもの♪」といったものが定番。旅の戦利品をベッドに並べて悦に入る「JJごっこ」も楽しいものだった。そういうのを思い出すと、国内のパワスポや神社仏閣巡りに向かう女子の旅熱を見て、大きく変わったなぁと思わざるを得ない。
スピリチュアルというと、内的・静的なイメージがあるので、伊勢や屋久島、はたまたセドナくんだりまでわざわざ足を伸ばすというアクティブさは、アンバランスで面白い。しかし、四国八十八か所霊場巡りなどが大ブームにはなっていないのを見ると「スピリチュアルってなんだかおしゃれ」という域は出ない。自分の足を痛めてまでは…とか、お遍路さんスタイルっておしゃれじゃないし…とか。
つまり、「屋久島にも、セドナにも行きました♪」というのは、あくまでもスピリチュアルという「スタイル」を消費している ということ。「スピリチュアル版JJごっこ」なのだ。
神頼みで人任せな受け身のものではなく、言うなれば「アクティブ・スピリチュアル」という新しいスタイルだ。ポジティブで自分参加することに楽しさを見出すことが鍵となる。こうした気分が重要視されていることは、女性消費者向けのビジネスを行うすべての人が把握しておくべきことだろう。
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