『精神修行ワークアウト』

「身体にいい」という言葉は、かつては40オーバー対象だったが、今や20代女性にとってかなりの関心事となっている。若者の趣味やレジャーといえば、「身体や財布を無理してでも、その時楽しければ」という刹那性が多少なりともあったと思うのだが、今は違う。新しいことにチャレンジしてもらうための重要なキーポイントは、「身体がきれいになる」「健康になる」という持続性だ。

この流れの元をたどると、90年代半ばに大いに盛り上がった「癒し」ブームに行きあたる。2000年代初頭にその癒しブームが進化して、神仏参拝やら風水やらの「スピリチュアル」ブームとなったのだが、2007年頃からは、目に見えない「気」を感じるよりも、自分の体を動かすことで、何か「手ごたえ」「体感」を求める動きが顕著になってきている。忙しくて疲れたり、人間関係で悩んだり…という慢性的なストレスは、いつの世にも存在するが、「100年に一度の大不況」とも言われるこの時代の不安は、もうアロマやヒーリングミュージックやスパなんかでは癒されないレベルの深刻さ。

そこで生まれたのが“ワークアウト癒し”だ。他人の手じゃ、もう癒されない。やせたりキレイになるためのエクササイズよりも、精神にも働きかけるワークアウトが旬で、自然を相手にしたアウトドア系が人気。ただゴロゴロしているだけじゃ疲れは取れない…という、「アクティブレスト」の概念も最近注目されている。

また、美術館・トレッキング・座禅などがブームとして取り沙汰されているように、内向き・精神的なものも注目される。歴女、鉄女、農女なども同様。マニアックと言われた趣味がメジャー化しているのも、“ワークアウト癒し”の現れといえそうだ。