『草食エロ』

今、女性誌では「色気」とか「セクシー」という表現が頻出している。しかし、これはかつての「エロ」ではない。 「エロ」と言っても、「ねあかセクシー」「可愛いセクシー」「ヘルシーエロ」のように、「お子様禁止」感がまったくないのだ。「ヌード」という言葉も同じ。「ヌードカラー」とか「ヌーディメイク」など、おしゃれワードとして積極的に消費される。

「可愛い」とか「かっこいい」という言葉と組み合わせた計算づくのエロが、2006年あたりの倖田來未らによるブームだったのに対し、2009年のエロは、そういう計算はまったくない。隠そうとも、見せようともせずに、エロ視点から全く離れたところで胸や素肌を解放する。媚びやこれ見よがしな感じがないのが今の気分の「セクシー」。これはむしろ、エロとは対極にあるナチュラルの流れだ。

従来のエロが「肉食エロ」だとしたら、今のエロは「草食エロ」といってもいい。本人はエロしているつもりがないけれど、素だからこそエロく見えるという人もいるかもしれない。

今、女性たちがヌーディさに惹かれるのは、エロではなく「ナチュラル」「楽」を求めるからこそ。昨今の「盛る」嗜好とは対極の、ナチュラル嗜好の女性たちが行き着いたのが「エロ」というのは非常に興味深い。